相続が発生した際にはさまざまなトラブルも同時に発生してしまうことがあります。
遺留分という制度も相続制度におけるトラブルの原因の一つです。
当記事では、遺留分侵害額請求について詳しく解説をしていきます。
遺留分侵害額請求とは
相続が発生すると被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人には最低限決まった割合で財産を承継する権利が生じます。
この最低限相続することのできる財産の割合のことを遺留分といいます。
もっとも相続が発生しても必ずしも、この遺留分に従って財産が承継されるとは限りません。
被相続人が生前に残した遺言や遺贈などの影響によって、自身が最低限承継できるはずの財産を相続することができなくなってしまう場合があります。
これが遺留分を侵害された状態です。
遺留分が侵害された相続人は、他の相続人に対して遺留分侵害額請求訴訟を提起することが可能です。
もっともこの遺留分を請求することができる相続人は限られており、被相続人の直系尊属にあたる親か、直系卑属である子のみとなっています。
法定相続人の中には、被相続人の兄弟姉妹も含まれていますが、兄弟姉妹に関しては遺留分を主張することができません。
その理由としては、被相続人の親や子どもは被相続人の経済状況に依存していることが多く、被相続人の死亡によって経済的に困窮してしまう可能性が高いからです。
他方で兄弟姉妹に関しては、基本的に家計が別となっていることがほとんどであり、被相続人の死亡によって自身の生活に影響が出るということはほとんど考えられないことから、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められないという面があります。
遺留分侵害額請求の消滅時効
消滅時効は、一定の期間を経過することによって権利を消滅させ、法的な安定性を図った制度です。
遺留分侵害額請求についても消滅時効による消滅を妨げることはできません。
消滅時効は民法166条にその規定がありますが、遺留分侵害額請求に関してはその権利の発生原因が一般的な債権とは異なり特殊性があることから、個別の条文で消滅時効に関する規定が設けられています。
それが民法1048条です。
1048条では「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年」という請求をする人の主観的な目線に立った要件と、「相続の開始の時から10年を経過したとき」という客観的な要件の2つがあります。
前者の主観的要件に関しては、相続の開始や、遺留分を侵害する贈与、遺贈があったときから1年以内に権利を行使しなかった場合には、遺留分を請求することができないとしています。
特に単に遺贈や贈与があったということだけではなく、その遺贈や贈与によって遺留分が侵害されていることまで認識していることを要しています。
後者の客観的要件に関しては、相続が発生してから権利を行使せずに10年が経過すると遺留分の請求ができなくなるとしています。
これは遺留分権利者が知っているかどうかは関係ありません。
相続人の中には、何らかの理由で家族と疎遠である方もいらっしゃるため、その方を救済するために長めの期間が設けられています。
遺留分侵害額請求の注意点
遺留分侵害額請求を受けた場合には、放置することなく適切に応じる必要があります。
放置した場合には、調停や訴訟にまで発展してしまう可能性が非常に高いといえます。
特に調停を放置した場合には、裁判所に財産の差し押さえをなされてしまう可能性があります。
また、訴訟提起に関しても無視をしていると、強制執行により財産を強制的に差し押さえられて競売にかけられてしまいます。
遺留分を請求された際には、まず弁護士に相談することが望ましいです。
請求を受けた際には、相手が本当に遺留分権者であるか、時効が成立していないか、相手の請求額は適切かどうかなどについて確認しなければなりません。
しかしこれらの事項を、法律に詳しくない一般の方がチェックするのは非常に難しい場合があります。
そこで弁護士に相談をすることによって、スムーズかつ円満に解決を目指すことが可能です。
遺留分侵害額請求は新埼玉法律事務所にお任せください
遺留分侵害額請求は相続制度の中でも複雑なものの1つです。
もし請求をされた場合、無視をせずにまずは一度弁護士に相談をして相手の請求が適切なものであるかをチェックすることが解決への第一歩です。
新埼玉法律事務所では、遺留分をはじめとした相続や遺言に関するトラブルについても専門的に取り扱っておりますので、お困りの場合は一度ご相談にお越しください。