不法行為(民法709条)の成立要件は、
①権利または法律上保護されるべき利益の侵害(違法性)(709条)
②損害の発生とその数額(709条、710条)
③行為と損害の間の因果関係(709条)
④故意・過失(709条)
⑤責任能力(712条、713条)
⑥違法性阻却事由(720条)がないこと
の6つです。
①について、違法性は、被侵害利益の強固の程度と侵害行為の態様の相関関係で決まるとされています。そのため、被侵害利益が生命・身体の安全のような非常に重要な利益である場合には、侵害行為の態様が僅少であったとしても、その違法性が肯定されます。
②について、ここにいう「損害」とは、不法行為がなかったならば被害者にあるべき仮定的な利益状態と、加害がなされた現在の利益状態との差であるとされています。
そして、「損害」には、財産的損害・精神的損害が含まれます。財産的損害は、被害者に現存した財産的利益が減少したことによる損害である積極的損害と、本来ならば増加するはずであった財産を不法行為により得られなかったことによる損害である消極的損害の2種類があります。また、精神的損害とは、いわゆる慰謝料のことです。
④について、過失とは、予見可能性を前提とする予見義務違反及び結果回避可能性を前提とする結果回避義務違反のことを言います。
この故意・過失については、原則として、被害者側に立証責任が課されています。立証責任とは、裁判において、ある事実を証明できなかった場合に、かかる事実が認定されないことによって不利益を被ることを言います。
したがって、被害者側が加害者の故意・過失を立証できないと、損害賠償請求は認められません。これが不法行為請求の大きなポイントでもあります。
なお、債務不履行に基づく損害賠償請求の場合には、債務者側が自身に故意・過失がないことを立証すべきものとされています。
⑤について、責任能力とは、自己の行為が違法なものとして法律上非難されるものであることを弁識し得る能力のことをいい、これは11~12歳で認められるとされています。
⑥について、違法性阻却事由とは、通常であれば不法行為を構成するような行為であっても不法行為が成立しないこととなる特別の事情のことを言います。具体的には、正当防衛(720条1項)、緊急避難(同条2項)が挙げられます。
弁護士 大谷部 雅英(新埼玉法律事務所))は、交通事故、医療過誤、契約不履行などといった損害賠償に関する業務を取り扱っております。さいたま市、川越市、越谷市などの埼玉県、東京都を中心に、関東全域の皆様からのご相談を承っておりますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。豊富な知識と経験からご相談者様に最適な解決方法を提案させていただきます。
不法行為
弁護士 大谷部 雅典(新埼玉法律事務所)が提供する基礎知識
-
離婚協議書を公正証書にする方法とは?メリットも併せて解説
離婚協議書を作成する際に、公正証書化するという話を耳にしたことがあるかと思います。 しかし、公正...
-
協議離婚
夫婦間の話し合いによる合意で成立する離婚を協議離婚といいます。 協議離婚は、夫婦双方が離婚に納得する...
-
相続のための事前準備
相続が開始すると、様々な手続きに追われることとなります。 相続手続きを円滑に進めるためには、相続に向け...
-
離婚と子供
離婚をした際に、最も大きな影響を受けるのは、子供と言えるでしょう。 一方の親がいなくなるというのは、...
-
【弁護士が解説】モラハラが原因で離婚するために有効な証拠とは
近年、モラハラ(モラルハラスメント)という言葉を耳にすることが多くなり、どのような言動がモラハラにな...
-
浮気・不倫慰謝料の計算方法
浮気・不倫について、特に浮気についてはその定義が人によって異なりますが、一般的には恋人がいるにもかかわ...
-
【弁護士が解説】相続放棄できないケースとは?
相続が発生した際、被相続人の方(=お亡くなりになった方)に借金があった等の理由で相続放棄が行われるこ...
-
遺言により遺産分割する
被相続人の遺言があった場合には、当該遺言は、遺産分割協議に優先します。 したがって、遺言により遺産分割...
-
子供の養育費
離婚後に親権者となった者は、子供を世話し、教育していかなければなりません。このような子供の養育には、養...