■公正証書とは
公正証書とは、法律のプロである公証人が、その権限に基づき、公証役場で作成してくれる文書のことをいいます。公証人は、長年にわたり法曹として法律に携わってきた、法律のプロです。そんな公証人によって作成された公正証書は、公文書であって信頼のおけるものです。証明力を有しており、執行力を有するものもあります。執行力とは、公正証書を根拠に、強制執行として相手の財産を差し押さえることができるといった効力のことをいいます。
●養育費の強制執行について
養育費の支払いについて、当事者間で話し合い、取り決めを行っていた場合には、養育費の未払いがあった際に、支払いを相手に請求することがあります。その際に、取り決めておいた内容が公正証書として文書化され、残っていると、請求をスムーズに行えることがあります。
養育費の未払いのケースで、強制執行を行い、養育費の回収を行うことができますが、差し押さえによる直接強制、あるいは相手に心理的圧迫を加えることによる間接強制の方法が考えられます。強制執行を行うためには、債務名義が必要となります。
●公正証書を作成するメリット
最初に確認した通り、公正証書は、公証人が権限に基づいて作成する公文書です。そのため、信頼度が高く、証明力があることはメリットといえます。また、公正証書は、作成されると公証役場で保管されます。そのため、勝手に誰かに内容を変えられたり、誰かに取られたりする心配をする必要がありません。このように、偽造や紛失のおそれがない点も、メリットといえます。
さらに、公正証書は厳格な手続きによって作成されているため、他の私文書を使って手続きを進めていくよりも、その後の手続きがスムーズに行われます。このように、迅速な手続きが行える点もまた、公正証書を作成する大きなメリットです。
強制執行の場面においても、公正証書を作成しておくメリットがあります。強制執行認諾文言を付けた公正証書を作成しておくと、すぐに強制執行を申し立てることができます。本来であれば、強制執行には債務名義として判決書きを用いることが多いです。つまり、一度裁判を行って、勝訴判決を得てから、それを債務名義として強制執行の申立てを行うということです。しかし、強制執行認諾文言付きの公正証書があれば、それを債務名義として、すぐに強制執行の申立てを行うことができるのです。したがって、裁判をする必要がなく、裁判所を通して行う手間が1つ省けるということになります。
●公正証書の作成方法
ここからは、実際に公正証書を作成する手順について確認していきましょう。大きく分けて3つのステップで作成していきます。
①当事者間で話し合い、合意をしておく
公正証書を作成するにあたっては、まず、文書に盛り込む内容を決めておく必要があります。そうでないと、いざ作成の段階に入った時に、「この内容は公正証書に入れたくない」といったことを言い合うこととなり、結局公正証書の内容を決められず、その場で作成することができなくなってしまうからです。公証役場で作成をする前に、きちんと当事者間で話し合いを行い、どのような内容で公正証書を作成するのか、お互いに認識の齟齬がないようにしておくことが大切です。
②公証役場に問い合わせ、準備をする
公正証書を作成する前に、公証役場に連絡をし、どのような内容の公正証書を作成したいのかを伝えておきます。その際、公証役場の担当者から、必要書類等についての確認が行われます。場合によっては、作成しようとしている公正証書が法的に問題ないものかどうか、といったことについても話すことがあります。公正証書の作成日が決まったら、担当者の指示に従い、作成日までに書類の準備をしておきます。
③公証役場で公正証書を作成する
公正証書の作成においては、当事者双方が公証役場まで出向く必要があります。もし仕事の都合等でそれが難しい場合には、弁護士等の代理人を立てて、代わりに公証役場まで行ってもらうという方法もあります。その場合には、委任状を別途作成しておく必要があります。
公証役場では、公証人が文書を作成します。当事者から伝えられた内容に沿って、それを公証人が読み上げながら確認をし、当事者の合意がなされたうえで作成されていきます。
■養育費・公正証書に関するご相談は当事務所まで
新埼玉法律事務所では、離婚に関するご相談を幅広く承っております。養育費に関するご相談や、公正証書の作成に関して不安な点等ございましたら、弁護士 大谷部雅典までお気軽にご相談ください。
公正証書を作成するメリット
弁護士 大谷部 雅典(新埼玉法律事務所)が提供する基礎知識
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