離婚時の年金分割は、厚生年金に加入していなかった側の離婚後の生活を安定させるために重要な役割を果たします。
ここでは、年金分割制度の概要、手続きの流れなどについて考えていきます。
年金分割の制度の概要
年金分割制度とは、離婚時に夫婦の一方の厚生年金や共済年金を夫婦間で分割し、それぞれの年金額に反映させる制度です。
この制度の目的は、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた年金記録を、離婚後も公平に評価し、特に専業主婦・専業主夫など、厚生年金に加入していなかった側の老後の生活保障を確保することにあります。
年金分割の対象となるのは、原則として厚生年金などの会社員や公務員が納付する、給与額に応じて保険料が決まる年金であり、国民全員が加入する国民年金は分割の対象にはなりません。
年金分割の対象となる厚生年金は、婚姻期間に納付した部分のみとなります。
合意分割と3号分割の違い
年金分割制度には、合意分割と3号分割の2つがあります。
合意分割とは、夫婦間の合意、話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所の調停・審判・判決によって、婚姻期間中の厚生年金などの記録を50%まで分割できる制度です。
一方で、3号分割とは、婚姻期間中に国民年金の第3号被保険者(主に専業主婦や専業主夫などの厚生年金加入者の扶養に入っていた配偶者)であった期間に限り、相手方の厚生年金記録を自動的に50%に分割できる制度です。
年金分割の手続きの流れ
合意分割の場合、年金分割の手続きは、以下の流れで進みます。
1.話し合いや調停・審判で分割割合を決定する
合意分割の場合、まずは夫婦間で年金分割の割合について話し合い、合意を目指します。
合意できない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てて、裁判所に判断を仰ぐこととなります。
2.年金記録開示請求をする
年金分割の対象となる期間や、分割の対象となる標準報酬額などを確認するために、夫婦それぞれが年金事務所に「年金分割のための情報通知書」の請求を行います。
3.離婚成立後に年金分割の請求を年金事務所に提出する
離婚が成立した後、年金分割の請求手続きを年金事務所で行います。
年金分割の請求には、戸籍謄本などの離婚の事実を証明する書類、加えて合意分割の場合は合意内容を証明する書類が必要です。
この請求は、原則として離婚が成立した日の翌日から2年以内に行う必要があります。
3号分割はこの、年金事務所への請求のみで手続きが完了します。
まとめ
今回は年金分割制度の概要や手続きの流れなどについて解説しました。
適切な手続きを進め、老後の生活設計を安心して立てるためにも、離婚を検討している方や、既に離婚が成立した方で年金分割について不安がある場合は、離婚問題に詳しい弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。